2014年2月7日金曜日

「博士の愛した数式」Ⅱ

昨日の文章は、どうも本筋でないところに拘泥してしまった気がする。
気を取り直して、彼女が描いた世界の話をしよう。

あるいは、彼女が書きたかった世界とは何か。
最も昨日書いたように、私の読んだ本は2冊に過ぎないのだが。

だから、どこまで行っても彼女の全体像ではありえない。
この2作品から、私が読み取ったことに過ぎない。

彼女の書きたかったことはこの世のことではなく、あの世のことだったのではないだろうか。
「密やかな・・・」などについてはSF的という人もいるらしい。

そうではないと思う。
SFは科学を基にした空想小説だ。

つまりはこの世についてのの空想だ。
ファンタジーも同じことだ。

この世に人間でないものを登場させてお話を紡ぐ。
小川洋子のこの2作品は違う。

仏教でいう「彼岸」の世界ではないかと思う。
この世からあの世へ渡る。

渡った当初はこの世のものをたくさん抱えている。
それがひとつずつ消えてゆく。

それがあの世ではないかと、彼女は言いたいのではなかろうか。
博士の世界もこの世では無いように読み取れる。

あの世では、時間というものがこの世とは違う。
自分の一番良かった時。

あとは80分程度の今しかない。
そんな解釈をしてみた。

ただ、彼女の生い立ちは仏教的ではないようだ。
「金光教」の家庭に育ったというから、むしろ神道に近いのではないだろうか。

もとより、彼女の心のうちは解りようが無い。
私など偉そうにいう立場ではないが、もし彼女があの世を描こうとしている作家であるとしたら、確かに稀有な作家ではあると思う。

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